77歳“玉子焼き師”が極め続ける、伊達巻「の巻」の心はずむ味
〜通りがかりのフリーライター通信〜

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来年2022年に創業70年を迎える山田製玉部には、14歳で入社し玉子焼きを作り続けて60年超の大ベテラン「南勝男さん」がいます。今年7月に3代目を就任した山田勝宏社長が生まれる前から働き続ける南さんに、山田社長は頭が上がらないよう…。

「僕が小学生の頃、現在の本社ビルの場所には自宅と工場が同じ敷地にありました。師走が近づき寒さが厳しくなり始める頃、の巻(伊達巻)の甘く少し香ばしい匂いに誘われるように工場に行くと、南さんが焼き立て熱々、湯気が出ているひとかけを食べさせてくれるんですよ。大好きなおやつの時間でした」(山田社長)

焼き立ての伊達巻はフワッとやわらかいシフォンケーキのよう。きめ細かくしっとりしているのに、どこまでも軽やか。ほんわか幸せな甘みが広がる味わいです。その時点でも充分おいしいのですが、職人の技が光るのは「冷めてもおいしい伊達巻」にするための、温度管理や巻き方。製造日から何週間か後でも味わいが抜け出さないよう、確立された製造技術があります。

焼き上がった生地の上に重しを置き型を付け、巻いて形にする作業は流れるように進みます。巻く際に力を入れすぎると生地が割れ、弱すぎるとうまく巻けない。10分ほど生地を冷まさないと伊達巻独特の型が付かない。聞けば、重しを置く時間や巻くタイミングで、できあがりのかたさが大きく異なるとのこと。ですがこれらの作業にマニュアルはありません。その日の気温や湿度など環境によっても重しを置く時間などは変わってきますが南さんに迷いはなく、60年超積み重ねてきた勘が、そのタイミングを教えてくれるようです。

焼き上がった生地を、高温に注意しながら慎重に南さんのところに運ぶ女性は妻のみち子さん。休日明けには2人で行った温泉の話などをおもしろおかしく話して職場を盛り上げる、仲良し夫婦です。

おいしい伊達巻の技は、焼きだけではありません。材料の卵とすけそうだらを混ぜるのは、一般的なサイレントミキサーではなく「石うす」です。ステンレス製より熱をもたない石うすを使うと、軽い食感につながります。焼き立てのシフォンケーキのような軽さは、この石うすにも秘密があるようです。来年のお正月に向けての新商品は、さらにめでたい「丹波黒」が入った伊達巻の発売を予定しています。

最後に南さんに、就任したばかりの山田社長をどう思うか質問したところ……
「最高!!」の一声。
3代目社長の成長も、来年のお正月の伊達巻も、最高の形で仕上がっています。

(写真:永井 匠太郎、執筆:松村 美枝)

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株式会社山田製玉部